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デザイン経営とは?効果や考え方、具体的な実践方法について解説

  • 執筆者の写真: 貴代 長尾
    貴代 長尾
  • 6月24日
  • 読了時間: 20分

近年、企業の競争力を高める手段として注目されているのが「デザイン経営」です。視覚的なデザインにとどまらず、ユーザー視点で課題を捉え、組織全体に変革をもたらすアプローチとして、多くの企業が取り入れ始めています。この記事では、デザイン経営の概要や必要とされる背景、導入による効果や進め方まで、実践に役立つ知識をわかりやすく解説します。 デザイン思考・デザイン経営でお困りなら一般社団法人ブランディングデザイン協会へ


目次


デザイン経営とは?

「デザイン経営」とは、デザインの思考や手法を活用して、企業価値を高める経営手法のことです。デザインの力を「企業価値を向上させるための経営資源」としてとらえていることが特徴です。企業がデザイン経営を進めることで、ブランド価値の向上やイノベーション創出を図り、企業の競争力を高められるとされています。「デザイン」と聞くと「視覚的な要素をよくするもの」とイメージする方も少なくないですが、本来デザインは設計や構想などの意味も持っています。デザインは目に見える外装などをよくするだけでなく、現在では課題を解決するための取り組みや設計をする意味合いでも用いられます。デザイン経営におけるデザインの対象は幅広く、企業のビジョンや意志、ユーザーに価値を生む事業、プロダクト、サービスなどが挙げられます。これまでの経営手法では売り上げデータなどの数字に着目されてきましたが、デザイン経営ではユーザーのニーズや感情に視点を置きます。潜在的なニーズから「課題」と「解決策」を探り、製品やサービス開発、事業にしていくことがデザイン経営の本質です。


2018年に経済産業省 特許庁が『「デザイン経営」宣言』を発信

経済産業省・特許庁は、2018年に「デザイン経営」宣言を提言し、デザイン経営を推進しています。デザイン経営宣言は、経済産業省・特許庁が共同で立ち上げた有識者からなる「産業競争力とデザインを考える研究会」が議論を重ね、その結果をとりまとめた報告書です。国内では、この「デザイン経営」宣言が発信されたことで、デザイン経営が広く知られるようになりました。 経済産業省・特許庁は、デザイン経営を以下のように定義しています。

『デザイン経営の本質は、人(ユーザー)を中心に考えることで、根本的な課題を発見し、これまでの発想にとらわれない、それでいて実現可能な解決策を、柔軟に反復・改善を繰り返しながら生み出すこと』また、デザイン経営はブランド構築とイノベーション創出に効果があり、産業競争⼒の向上に寄与するということが提言されています。 参考:経済産業省・特許庁|「デザイン経営」宣⾔ 現在の日本は多様な製品やサービスが豊富にあり、機能や品質のよさだけでは他社との差別化が難しく企業が成長し続けることが困難になっています。一方、欧米企業では、企業理念やビジョンを基に、企業独自の強みやイメージをデザインによって表現し、製品価値を高めながらグローバルな経済活動へとつなげています。このような背景から、日本企業もデザインに対する意識を高めなければ、国際的な協力が低下してしまうことが危惧されているのです。企業の競争力を高めるためにデザイン経営が重要視され、「デザイン経営」宣言が提言されました。


「デザイン思考」とはどう違うの?

デザイン経営の概要について解説しましたが、デザイン経営を語るときによく出てくるのが「デザイン思考」です。 デザイン思考(デザインシンキング)とは、ユーザー視点からビジネスの課題を見つけ、それに基づいて施策や効果検証などを行いながら、課題解決に取り組む手法のことです。 主に製品開発などを行う際に用いられ、デザイナーやクリエイターが仕事をするうえで重要となる思考法です。ユーザーのニーズや満足度に重点を置くことや、固定概念にとらわれないアイデアの創出、試行錯誤を繰り替えしながらブラッシュアップを図ることが特徴です。 デザイン思考は、問題解決のための「思考法・プロセス」であるのに対し、デザイン経営は、組織全体の戦略やマネジメントにデザインを組み込む、より包括的な取り組みです。 両者は概念や焦点などは異なるものの、デザイン思考はデザイン経営を実現するための重要な実践方法であるという関係にあります。従来の経営手法に対して、事業戦略にデザイン思考の手法を取り入れることで、ブランド価値の向上やイノベーション創出を図ります。 「デザイン経営」宣言においても、デザイン思考はデザイン経営を実施するにあたってのツールであることが述べられています。


デザイン経営が必要とされている背景

それではなぜデザイン経営が必要とされるようになったのでしょうか。 その背景の一つとして、市場の変化が挙げられます。すでに紹介したように、現代の市場には多様な製品やサービスがあふれ、機能や品質のよさだけでは企業が成長し続けることが困難になっています。 従来は供給量よりも需要が上回っていたため、よいものを生み出せば売れる時代でした。大規模な生産力や設備などの有形資産を所有していることが、価値とされていました。 しかし現在では需要よりも供給量のほうが上回っており、よいものを生み出すだけでなくユーザーから選ばれなければならない時代へと変化しています。ユーザーのニーズや要望に応えるための仕組みやプロセスといった、無形資産に価値が見出されるようになったのです。 また、製品やサービスだけでなく、それらを提供する企業に対しても、価値観やコンセプトなどに共感を抱いたり価値を感じたりできることが、ユーザーが選択するうえで重要なポイントになっています。 このような変化に対応し、成功している企業が取り入れているのが、「デザイン経営」です。デザイン経営宣言でも、世界の有力企業は、経営の中核にデザインの思考や手法を据えているということが述べられています。日本の企業が競争力を高めるためにも、デザイン経営を取り入れることが課題となっています。


デザイン経営が企業にもたらす効果

デザイン経営を取り入れることで、企業にとっては以下のような効果が期待できます。

●   市場での競争力が強化できる

●   イノベーションの促進につながる

●   ブランドの価値が向上する

●   組織内の意識改革につながる

それぞれ詳しく解説します。


市場での競争力が強化できる

デザイン経営は、他社との競争力を強化し、市場での優位性をもたらす効果があります。 「デザイン経営宣言」においても、デザイン経営に積極的に取り組む企業は、営業利益や株価が上昇したなどの成果をあげていることが示されています。 デザイン経営は、ユーザーの潜在ニーズを発見し、それを解決するデザイン思考のプロセスを含んでいます。これにより独自の価値を提供できるため、価格競争などにも影響されることがなく、競争力の強化につながります。


イノベーションの促進につながる

デザイン経営は、イノベーションを実現するために重要な役割を果たします。 イノベーションを実現するためには、潜在ニーズを発見しそれを解決していくことが重要です。そして従来の概念にとらわれることなく、新たな意見やアイデアを生み出す環境作りも求められます。 デザイン経営でも、このような思考や手法を重視しています。そのためデザイン経営を取り入れることで、新しいサービスやビジネスモデルの創出、イノベーションが促進されるという効果が期待できます。


ブランドの価値が向上する

デザイン経営は、ブランド力の向上にもつながります。 デザイン経営では、企業の価値やイメージを構築させることや、企業とユーザーのすべての接点において一貫したメッセージとして伝えることが大切です。 ユーザーは一貫性のあるビジュアルや体験を通じて、企業に対する信頼性を高めることにつながり、その結果、顧客のロイヤリティやブランド価値を向上させる力があります。


組織内の意識改革につながる

デザイン経営を導入することで、経営層から現場の従業員に至るまで一人ひとりがユーザーを中心とした視点を持つようになります。これまでのように売り上げやコストに注目するのではなく、ユーザーの潜在ニーズを満たすことに重点を置く、開発や事業運営を行う意識が養われます。 またデザイン経営に必要なデザイン思考では、従来の固定概念や思い込みなどは取り払った考え方が大切であり、意見やアイデアを出しやすい環境作りも求められます。そのためメンバー間の信頼構築やアイデアの提案が習慣化されるなどの効果も生まれるでしょう。その結果、組織全体の意識改革の促進にもつながるのです。


デザイン経営の基本的な考え方

デザイン経営における基本的な考え方としては、次のようなものが挙げられます。 ●   ユーザー視点に重点を置く

ユーザーの視点に重きを置いて、ニーズや価値観を深く理解したうえで、製品・サービス開発、事業運営を設計します。

●   課題の特定と解決策の立案

ユーザーの行動や意見から、潜在的な課題を特定します。解決策は固定観念にとらわれず、多様な視点から導き出されることが求められます。

●   検証・改善を繰り返す

一度の施策で終わらせず、ユーザーからのフィードバックをもとに検証と改善を繰り返し、より最適なサービスやプロダクトへと進化させていきます。

●   革新的なアイデアを生み出す

従来の枠組みにとらわれず、自由で創造的な発想を促進します。デザイン思考をビジネスに組み込むことで、これまでにない価値を提案するのが狙いです。


デザイン経営の進め方

ここまでデザイン経営の概要や取り組むことで得られる効果について解説しましたが、実際にデザイン経営を実践する場合、どのように取り組めばよいのでしょうか。デザイン経営を実践する際は、以下のステップに沿って進めていきます。

  1. 現状分析と目標の設定を行う

  2. デザイン責任者の選任・経営推進チームの構築

  3. デザイン経営戦略を策定する

  4. デザイン経営の施策を実施する

  5. 効果測定と改善を行う

それぞれのステップを詳しく見ていきましょう。

step1:現状分析と目標の設定を行う

プロジェクトなどを進める際は、現状分析と目標設定を行うことが大切です。 デザイン経営を実践する前に、まずは事業内容や製品、サービスなどについて現状を把握することから始めます。そのためには、社内外のデータや市場動向、ユーザーからのフィードバックなどを集め、分析する必要があります。 現状を分析することで、自社の強みや抱えている課題などが見えてきます。デザイン経営を進めるうえで、組織や事業が未来に向けてどのように変革したいのか、何を目指すのかの明確な目標を立てられるでしょう。

step2:デザイン責任者の選任・経営推進チームの構築

デザイン責任者の選任と、経営推進チームの構築のステップです。このステップは、デザイン経営に必要な、以下の条件を満たすステップでもあります。

●   経営チームにデザイン責任者がいること

●   事業戦略構築の最上流からデザインが関与すること

まずデザイン責任者とは、ユーザーの要望や潜在ニーズから解決すべき課題を見つけ、課題解決に至るまでのプロセスにおいて、具体的に設計や構想ができるスキルを持っている人材です。また製品やサービス開発、事業内容がユーザーを中心に考えられているかどうか、ブランド力の向上に役立つものであるかを判断できるスキルも求められます。 デザイン責任者を含めたメンバーで、デザイン経営を推進する専門チームを構築します。チームは、事業戦略を構築する重要な位置に配置することがポイントです。 このステップによって、企業全体の事業戦略にデザイン視点が組み込まれます。トップダウンでデザインの視点が浸透されやすく、従業員全体のデザイン思考も高められるでしょう。その結果、デザイン人材の育成や採用、さらには部門間の連携強化にもつなげやすくなります。

step3:デザイン経営戦略を策定する

デザイン経営戦略を策定するステップです。 具体的な進め方としては、ターゲット顧客を明確にし、デザインコンセプトの定義や、製品・店舗・広告などのデザイン領域の特定、そしてそれらをどのように具現化するか検討します。 このステップでは、ユーザーが本当に求めているニーズの発見や仮説の立案、そして従来の考え方や固定概念にとらわれない発想が求められます。デザイン経営では、「企業が作りたいものを作り、どう提供するか」という戦略を考えるわけではありません。ユーザーが求めているもの、ユーザー自身も気づいていない潜在ニーズを満たすものを見つけ、それらを満たせるものを提供する意識・プロセスが重要です。

step4:デザイン経営の施策を実施する

デザイン経営と従来の経営手法では、施策の実施方法に違いがあります。 従来は、「よいものを作れば売れる」という考えのもと、最初の段階で計画を立てて各プロセスを順番に進めていく、いわゆる「ウォーターフォール開発」が採用されていました。 一方、デザイン経営では、「ユーザーから選択されなければならない」という考えが基本です。そのため、はじめから詳細な仕様は決めず、試作とテストを繰り返し行う「アジャイル開発」を採用します。ターゲットの明確化や課題の設定、試作、テストを何度も繰り替えし、徐々に開発を進める手法です。

step5:効果測定と改善を行う

デザイン経営は、定期的な効果測定を忘れてはいけません。測定方法はユーザーへのアンケート調査やインタビューなどを行って満足度を測るほか、販売実績やシェアなどの定量データ、SNSでの評判や口コミなどの情報を調査する方法などがあります。 また目標に対する中間目標(KPI)を明確にし、目標の達成度を可視化することも大切です。進捗状況の把握はもちろん、思うような効果が得られない場合は、改善と施策を繰り返し行って改善サイクルを確立させます。 そして、成功事例を社内外に共有することも大切です。ブランド価値の向上やイノベーション促進など、企業の発展を伝えることができます。


デザイン経営を成功させるためのポイント4つ

デザイン経営を成功させるためにも、以下の4つのポイントを取り入れることが大切です。

●   デザイン経営を積極的に推進するための社員教育(人材育成)を行う

●   顧客の視点に立ったデザインを取り入れる

●   事業戦略からデザイナーを参画させる

●   新しい手法を取り入れながら改善し続ける

具体的な方法を紹介します。

1.デザイン経営を積極的に推進するための社員教育(人材育成)を行う

デザイン経営の重要性を理解していても、デザイン経営を採用し運用していくための「ノウハウが十分にない」という悩みを抱える企業も多いことでしょう。 デザイン経営を導入するには、デザインとビジネス、テクノロジーに関するスキルが欠かせません。従来なら各スキルを所有する人材が部門ごとに配置されていましたが、これらのスキルを総合的に持つ人材育成を行うことがポイントです。 たとえば、デザイン部門の人材が、ビジネスやテクノロジー分野を学ぶ教育や、反対にビジネス部門・テクノロジー部門の⼈材が、デザインの思考を身に付ける教育を行うと、デザイン経営に必要な人材育成につながるでしょう。

2.顧客の視点に立ったデザインを取り入れる

デザイン経営は、顧客の視点に立ってデザインを考えることが基本です。視覚的な要素に関するデザインだけでなく、製品やサービス、事業の在り方を、顧客の視点に立って徹底的に見直すことがポイントです。 ユーザーの視点に立てば、これまで当たり前のように提供していたものも見直すことができます。たとえば製品に問題なくても、その形状やパッケージの方法などを変えてさらに便利に使えるように改善できるかもしれません。企業のノウハウや強みを活かすことだけでなく、顧客視点であることが求められます。

3.事業戦略からデザイナーを参画させる

事業戦略とは具体的に、事業ごとの方針や目標、目標を達成するための計画を策定することで、企業全体の戦略のことを指しています。自社の強みをどのように活かすか、限られた経営資源をどのように分配するか、などを検討する企業にとって重要な要素です。 この事業戦略を行う段階からデザイナーを参画させ、デザインの視点を取り入れることがポイントです。すでに紹介したように、トップダウンでデザインの視点が浸透し、マーケティングや予算、人員配置など、幅広い分野でデザイン視点を組み込むことが可能です。

4.新しい手法を取り入れながら改善し続ける

デザイン経営は、イノベーションを促進し、これまでとは異なる新たな価値の可能性を秘めています。 しかし、イノベーションを実現させるには、新しいアイデアや自由な発想を得ることが必要です。そのため固定概念や従来の方法、実現性の有無にとらわれず、新しいアイデアを出したり、自由に発想できたりするような環境作りがポイントです。たとえば「多様なスキルや立場のメンバーでプロジェクトチームを作る」「意見を肯定的に受け止める」といった方法が挙げられます。 また小さなスパンで試作と改善を繰り返して、ユーザーの真に求めるものを作りあげていく姿勢も重要です。


デザイン経営を取り入れた企業の成功事例

デザイン経営がどのように企業に効果をもたらすのかを理解するためには、デザイン経営に成功している企業を参考にすることが有効です。ここでは、企業の成功事例を3つ紹介します。

Apple

Appleは、iMacやiPod、iPhone、iPadなど、多くのヒット商品を生み出し、世界中から支持され続けている企業です。 これらの製品に共通しているのは、機能性の高さに加え洗練された外観デザインです。必要な要素だけを残したミニマルな美しさが魅力であり、Appleを象徴するデザインとなっています。製造工場は、従来の製造方法やコストなどにとらわれることなく、実現させたいデザインに合わせて設備を導入しています。この自由な発想と徹底したこだわりが、成功へと導いています。 また製品の設計だけでなく、ユーザー体験全体にもこだわり、パッケージや店舗のデザイン性が統一されていることも特徴です。この一貫したユーザー体験がさらにAppleのファンを増やしているのです。

ダイソン 

ダイソンは、紙パックのいらないサイクロン掃除機や羽のない扇風機など、従来の常識を覆す新しいスタイルの製品を生み出しています。エンジニアがデザインを考える方法をとり、これまでの常識にとらわれない製品開発を行っていることが特徴です。またユーザー視点に重きを置き、ユーザーが感じている些細な不満を解決に導こうする姿勢が、イノベーションへとつなげています。 ダイソン独自のスタイルで製品開発を行うことで、革新的で実用性に優れた製品を生み出し、家電業界に新たなスタンダードを確立させています。

良品計画

デザイン経営取り入れ成功を収めている企業は、国内にも存在します。その一つが、無印良品の企画から販売までを手がける良品計画です。 良品計画は、無駄を排除したシンプルさと、高品質と適正価格を両立した生活用品を多数展開しています。その使いやすさと魅力から、幅広いユーザーから支持されるとともに多くのリピーターを生み出しています。カフェや宿泊施設の運営、不動産業まで幅広く事業展開していますが、そのすべてにおいて無印良品らしさを感じられる一貫した世界観が魅力です。 良品計画はデザイン経営を行う優秀企業として、2019年に経済産業省より表彰されています。経営層がデザインに関心が高く、企画から開発までの全工程においてデザイナーや品質管理責任者が一体となり、無印良品らしさがあるか意識していることが評価されました。


デザイン経営で起こりうる課題と解決策

デザイン経営を推進するうえで、課題が生じることも否めません。デザイン経営における代表的な課題は次の4点です。

●   社内全体で意識統一がされていない

●   人材不足により実践スピードが遅い

●   評価が定性的にならざるを得ない

●   ビジネスとの両立が難しい

ここでは具体的な課題とそれぞれの解決策を紹介します。

社内全体で意識統一がされていない

デザイン経営を推進するうえで、多くの企業が直面するのが「社内の意識のばらつき」です。 デザインの関係部署がほかの部署と分断されていると、部門ごとでデザインへの理解度や関心度に差が生じることはもちろん、ビジネスの方向性やデザインイメージなどを共有しづらくなります。 またデザインに関するスキルがあっても、どのようにして経営や戦略に組み込めばよいかわからず、実践に移せないというケースが少なくありません。

【解決策】

デザインは、単に見た目をよくするものではなく、問題解決のための活動であることを理解してもらえるように、啓発や教育をしていく必要があります。 全社員向けのワークショップや研修を通じて、デザイン思考やデザイン経営の意義を共有し、組織全体で共通認識を育てていくことが大切です。そのためには、経営トップがデザインの重要性を自ら発信し、全社的なビジョンとして共有することも重要です。

人材不足により実践スピードが遅い

デザイン経営を担うには、デザインとビジネスの橋渡しができる人材が不可欠です。 しかし実際はこのような専門人材が不足しており、プロジェクトの進行が遅れるといった課題を抱える企業が少なくありません。特に中小企業では、限られたリソースの中で即戦力を確保することが難しいのが現状です。

【解決策】

ビジネスとデザインの両分野に理解のある人材を育成するため、デザイン部門にはビジネスやテクノロジー面の教育を、ビジネスやIT部門にはデザイン面の教育を行っていくことが有効です。また仕事を属人化せず、デザイナーではない一般社員をプロジェクトに巻き込むことも解決策の一つです。自由な発想が得られるとともに、社内全体にデザインの意識が浸透し人材育成にもつながるでしょう。

評価が定性的にならざるを得ない

デザイン経営では、成果を数字で可視化しにくいという問題があります。デザインの効果がどこまで寄与しているかがわかりづらく、経営陣や株主から「デザインの効果が不明確」と見なされるリスクがあります。

【解決策】

解決策としては、定量的に測れるものを効果の指標とすることが挙げられます。あらかじめKPIを設定し、ユーザー満足度や利用率などの数値を測れるものをモニタリングすることが重要です。 また、ユーザーインタビューやSNSの口コミなどを活用し、定性的な成果も合わせて報告する仕組みを整えることで、デザインの価値を多角的に評価できます。

ビジネスとの両立が難しい

多くの企業では、売上やコスト削減が優先され、長期的な視点が求められるデザイン経営の施策が後回しにされる傾向があります。とくに中小企業の場合、現状のビジネスとデザイン経営の両立が難しいというケースも多数あります。

【解決策】

このような課題に対する解決策としては、デザインの成果がでるのは中長期スパンかかることを理解し、デザインを将来への投資として位置づけることが大切です。デザイン責任者を含む経営推進チームが重要な位置に配置されれば、現場の混乱も避けられるでしょう。また小さなことから実践し成功体験を積み上げていくことで、社内全体でデザイン経営の重要性への理解も深まっていくはずです。

まとめ

機能や品質のよさだけでは差別化が難しくなった現代において、企業が持続的に成長するためには、ユーザー視点を基盤とする「デザイン経営」の導入が欠かせません。ブランド価値の向上やイノベーションの創出、そして組織文化の変革まで、デザイン経営は幅広い効果をもたらします。 しかしデザイン経営の課題でも紹介したように、社内での意識統一や人材育成が難しいといった実情もあり、デザインの理解度を深める教育を行っていくことが重要です。 その教育を進めるうえでおすすめなのが「デザイン思考検定」です。デザイン思考検定では、これからの時代を生き抜くために必要な知識やスキルを習得できます。デザイン経営を実践できる人材になりたいという方、あるいは社内の人材を育成したいという方におすすめです。

デザイン思考検定の詳しい情報は、こちらをご覧ください。https://d-kentei.com/




 


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