古民家×デザイン経営|『試す文化』が広げた、事業の可能性 株式会社オカムライズ マネージャー 大地諭氏インタビュー

古民家×デザイン経営|『試す文化』が広げた、事業の可能性  株式会社オカムライズ マネージャー 大地諭氏インタビュー

千葉県佐倉市で、古民家を活用した多角的な事業を展開する株式会社オカムライズ。

同社は親会社であるオカムラホームの古民家事業から派生し、現在では旅館業からカフェ運営、レンタルスペース事業まで幅広いサービスを展開しています。

今回は、同社がBDA(一般社団法人ブランディングデザイン協会)を通じてデザイン経営の考え方を取り入れることで、どのように事業を発展させてきたのか、その実践的な取り組みについて詳しくお話を伺いました。

特に注目すべきは、失敗を恐れずスモールスタートで新しい挑戦を続け、データを分析しながら顧客のニーズを深く理解することで事業の幅を広げてきた点です。

デザイン経営を取り入れたことで、何が変わったのか。オカムライズのマネージャーとして経営に関わる大地諭氏に詳しくお聞きしました。

■一棟の古民家から始まった、非日常体験のプラットフォーム

オカムライズ大地氏

―― まず、株式会社オカムライズがどのような事業を手がけているのか教えてください。

大地氏

オカムライズは、親会社であるオカムラホームが古民家再生に取り組む中で、その施設の運営を担う会社として立ち上げました。

 

成田さくら邸の外観

現在は、千葉県佐倉市にある古民家を活用した貸切旅館・古民家カフェ・レンタルスペース、そして「Saunacamp かぐやの森」というテントサウナとバーベキュー、ドッグランなどを楽しめる屋外エリアを運営しています。

東京から高速道路で約一時間という立地で、非日常的な体験を提供できる場所としてさまざまな方に利用していただいています。

 

―― 具体的にどんな方が利用されているのでしょうか。

大地氏

かなり幅広いですね。貸切旅館はご家族やご親戚で一泊二日という利用もありますが、社員研修としてご利用いただくケースもあります。

 

成田さくら邸のいろり

例えば、企業の幹部や社員さんを集めて、かまどや囲炉裏を使いながら料理を作ってチームワークを確認するといった感じです。

また、CM撮影やドラマ・テレビ番組の撮影、振袖の着付け体験や写真撮影、婚活パーティーなど、古民家ならではの雰囲気を活かしたご利用もあります。

 

成田さくら邸の夜の外観

竹やぶや古民家の雰囲気が舞台に合うということで、刀を持った衣装の方がコスプレ撮影でご利用されることもあります。

婚活パーティーは、企業様がテーマを設けて開催されることが多くて、日本酒好きの方が集まる会などもありました。古民家ならではの空間がちょうど雰囲気に合うようです。

■スモールスタートの連続——モデルハウスが旅館になった理由

オカムライズについて語る大地氏

―― 現在のような多彩なサービスは、最初から計画されていたのですか?

大地氏

いえ、最初はオカムラホームのモデルハウスとして、時間をかけて家づくりを進めていく計画でした。

近くに田んぼや畑があるため、オカムラホームのお客様と一緒に農業体験をしながら、いろいろな体験ができる施設にしようと。

それが、2020年の東京オリンピック開催をきっかけに、佐倉市で「市街化調整区域内の古民家を活用した旅館業・飲食店が認められる」という条例が整備されました。

そこで、旅館業の許可を取得してみようという話になったのが、オカムライズの事業につながったのです。

実際に旅館業の許可を取得できたため、最初はインバウンド需要を取り込もうと考えていました。

 

―― しかしコロナ禍になってしまった。

大地氏

その通り、まさかの無観客オリンピックで、外国人のお客様を呼ぼうという計画は白紙になりました。

せっかく旅館業が取れたのにどうしようという状況で、まずテイクアウトの飲食をやってみることにしました。

その後、コロナ禍でも屋外のアクティビティならある程度できるという流れになり、テントサウナやバーベキューエリアも作りました。

今展開している事業は、古民家という箱をベースに、このように一つずつ追加してきたものです。

 

―― 失敗を恐れずに試す、という意識があったのでしょうか。

大地氏

デザイン経営で学んだことの一つが、まず小さく試してみるということです。

大きな費用をかけずに、できることからやってみて、うまくいかなければ学んで次に活かす。

外国人向けのサービスが響かなかったことも、失敗というより「都内のお客様の方がリピートしてくれている」という発見につながりました。

アンケートを積み重ねて分析した結果、今ではSNSの発信も都内に集中させています。

漠然と全国に向けて出していたものを、届けたい人に絞るようになりました。

■「箱」から「体験」へ——データが変えた発信軸

アンケート分析について語る大地氏

―― アンケートによる分析とは、具体的にどのようなものですか?

大地氏

お客様が来てくださった後に、何が良かったか・どこから来たか・何を目的にしたかを聞いて積み重ねています。

デザイン経営を学ぶ以前は「都内の方が多い気がする」「囲炉裏を喜んでもらえてる気がする」という肌感だけだったんです。

それを、なぜ都内のお客様が来ていただけるのか、何を喜んで帰られるのか、なぜリピートしていただけるのかを掘り下げて分析しました。

データとして見えるようにすることで、どこに集中すればいいかがはっきりしてきました。

 

―― 発信の内容自体も変わりましたか?

大地氏

大きく変わりました。以前は漠然とおしゃれな空間や建物をアピールする、いわば箱の紹介が中心でした。

しかし、分析の結果、お客様が求めているのは空間ではなく体験だということが分かった。

 

五右衛門風呂

今はInstagramなどのSNSで、「囲炉裏でこんな料理ができる」「五右衛門風呂を沸かして入れる」という過ごし方を具体的に発信しています。

貸切なのでプライベートな時間を過ごせるという点も、大きな差別化になっています。

 

■高校生×地元生産者——古民家カフェが生んだ地域の輪

エアコン清掃状況について語る大地氏

―― 地域との連携という点でも、ユニークな取り組みをされていると聞きました。

大地氏

高校生を中心としたSDGsの活動として、地域の食材を使ったメニュー開発から販売までを手がける取り組みを進めています。

古民家事業をきっかけに地域のさまざまな企業様と知り合うことができ、その縁で地元の生産者、お茶屋さん・味噌屋さんなどとコラボして、カフェのメニューを開発・販売しています。

面白いのは、このメニュー開発にデザイン思考を取り入れていることです。

私たちが学んだことを高校生に伝え、新メニュー開発時にはデザイン思考の考え方でグループ分けをして、アイデアを出して収束していく手法を使っています。

実際にいろいろなアイデアを出し合って、試作して、販売してみる。

採用されるのは一チームだけなので、残りのチームは悔しい思いをしますが、「なぜ選ばれなかったのか」を考える機会になります。

試作の段階で明らかに失敗しているチームもありますが、それがチームワークや段取りの重要性を学ぶ機会になっていると感じますね。

学校の先生も、そのような高校生たちの取り組みを見て、「失敗してほしいぐらいだ」とおっしゃっています。

 

―― 失敗することに意味がある、ということですね。

大地氏

そうです。値付けの難しさや、同じ商品でも見せ方によって売れ方が変わるとか、試作してみたら時間内にできなかったとか。

そういう学校では学べない経験を、地域の大人たちと一緒に体験できる。

高校生たちにとっては地域の特産品を知るきっかけにもなるし、学校の関係者や保護者の方が来てくださることで、カフェとしての集客にもなります。

収益を上げるということだけでなく、地域の輪が広がっていくことの価値は大きいと考えています。

 

■エアコン清掃事業——デザイン経営から生まれた意外な展開

オカムライズ大地氏

―― すでに多くのサービスを手掛けられていますが、新しい事業展開について構想はありますか?

大地氏

現在、オカムライズでエアコンの清掃事業を新たに展開しようと計画しています。

旅館業やカフェを運営していると、エアコンの清掃を業者さんに定期的にお願いするのですが、結構な費用がかかるんです。

そこで自社でできないかと考えたのが、エアコン事業のきっかけです。

そこからもう少し広げて考えると、親会社であるオカムラホームの住宅事業では、これまでお引き渡しした数千件のオーナー様がいらっしゃいます。

エアコンは今後法規制によって高グレード品しか出回らなくなっていく方向で、買い替えより長く使いたいというニーズが高まる。

そのお客様向けにエアコン清掃を提供できれば、既存の顧客基盤を活かした事業になる、という発想です。

 

―― 旅館の運営課題から、既存顧客向けの事業へと発展したわけですね。

大地氏

まずは自社施設で練習しながら始めて、慣れてきたら徐々に拡大していく予定です。

いきなり大きく動くのではなく、スモールスタートなら、万が一うまくいかなくてもリスクは小さい。

デザイン経営の考え方で言えば、お客様の課題から発想して、自分たちが持っているリソースとつなげていく。

その掛け合わせから新しいことが生まれるのかなと思います。

■これからデザイン経営に取り組む方へ

オカムライズ大地氏

―― 最後に、デザイン経営に興味を持っている方へ、実践されている立場からアドバイスをお願います。

大地氏

一番大切だと感じているのは、代表だけがわかっている状態ではなく、幹部・中核メンバー、できれば末端のスタッフまで、同じ考え方・同じベクトルを持つということです。

デザイン経営やデザイン思考の考え方は、知識として持っているだけでは意味がない。

実際に小さく試してみる、うまくいかなくても次に活かす、という実践を積み重ねていくことで、組織の中に少しずつ浸透していくものだと感じています。

私たちも、まだ道の途中ですが、「試してみる」を繰り返した先に、思いもしなかった出会いや事業がある。それは実感として言えます。

 


株式会社オカムライズ マネージャー 大地諭氏

千葉県佐倉市を拠点に、古民家を活用した貸切旅館・古民家カフェ・レンタルスペース・「Saunacamp かぐやの森」などを運営する株式会社オカムライズのマネージャーを務める。親会社・株式会社オカムラホームがデザイン経営を実践する中、グループ全体にデザイン思考を浸透させながら、地域に根ざした多角的な事業展開を推進している。


 

一般社団法人ブランディングデザイン協会(BDA)では、デザイン経営・デザイン思考に関心をお持ちの企業・経営者の方に向けた会員制度をご用意しています。

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