千葉県を拠点に、産学官連携による地域課題解決に取り組む一般社団法人MIRAI KOMINKA for School。
同法人は、不動産・建築業を営む株式会社オカムラホームのSDGs宣言をきっかけに設立され、地域の学校・自治体・企業と手を取り合いながら、高校生を中心とした活動を5年以上にわたって続けています。
同法人がBDA(一般社団法人ブランディングデザイン協会)と関わり始めたのは、団体設立とほぼ同じタイミングでした。
デザイン思考を軸とした活動を積み重ねる中で、組織や学生たちにどのような変化が生まれたのか。
理事・中西氏に、実践のプロセスと5年間の歩みについて詳しくお話を伺いました。
■オカムラホームのSDGs宣言から生まれた、産学官連携のプラットフォーム

――まず、MIRAI KOMINKAがどのような団体か教えてください。
中西氏
2019年にオカムラホームがSDGs宣言をしたあと、しっかりと動ける母体をつくろうということで、一般社団法人MIRAI KOMINKA for Schoolを立ち上げました。
一企業だけでは成し遂げられないことを、学生を主体に地域の企業などさまざまな団体と連携しながらSDGsに取り組んでいくというのが目的です。
地域が抱える課題に、みんなで向き合っていくというテーマを主眼に置いて活動を続け、現在は5期を終えて6期目に入りました。
順調とまでは言えないかもしれませんが、いろいろな方と関わり合いながら一生懸命続けています。
■「教わりながら」始まった、デザイン思考との出会い

――デザイン経営との関わりはどのように始まったのですか?
中西氏
2020年度にMIRAI KOMINKAのキックオフを佐倉で行った際、BDAに入っていただいたのがデザイン経営との本格的な関わりの始まりです。
代表理事の長尾徹先生にも顔を出していただき、活動の組み立て方などを指南していただきました。
先生は千葉工業大学デザイン科学科で教授を務められているので、デザイン経営に関するノウハウを豊富にお持ちでした。
私たちとしても学びたいことが多くありましたし、デザイン経営という言葉自体、当時はまだ聞き覚えのないものでした。
デザイン経営について1つずつ教わりながら、学生と一緒に実践していきました。
■「気づき、考え、行動する」——失敗を恐れない文化はどう生まれたか

――学生たちとの活動の中で、大切にしていることは?
中西氏
まずは行動、実践してみるということです。
学生さんは、何かを試して初めて良し悪しに気づけます。
頭の中で考えているだけでは、最終的なゴールになかなかたどり着けません。
大人になっても間違えることはあるし、学生であればなおさら間違いを恐れがちですが、だからこそ、まずは挑戦してみる、行動してみるということを大切にしています。
「気づき、考え、行動する」というのは、我々の母体であるオカムラホームの金子代表がよく口にする言葉です。
考える前に行動して、そこから気づきを得る。恐れずにまずやってみようというのが、デザイン経営を通じた活動の軸にあります。
それと、会議室の中だけで完璧なものをつくろうとするのではなく、外に出ていくことも重視しています。考えごとを頭の中だけで進めていると、なかなか生産性が上がりません。
外に出て人とアイデアを共有することで、周りから意見や協力をもらえる機会が生まれます。
「何をやっているの?」と声をかけてもらい、活動を説明すると「それなら手伝えるよ」と言っていただけることも多いんです。
人と接する機会を自らつくっていくことが、この活動の根幹だと感じています。
■5年かけて見えてきた成果——学生の変化と、自治体からの信頼

――活動を通じて、どんな成果を実感していますか?
中西氏
一番の成果は、失敗を恐れず挑戦する経験を通じて学生自身が変化し、それが地域からの信頼にもつながってきたことです。
大人になると変化はなかなか起きにくいものですが、十代のうちにチャレンジして達成感を得ることで、次のステップへ踏み出す姿を何度も見てきました。
人として少し変わる瞬間が、活動の中で何度も見受けられるんです。
その先には、地元に残る学生もいれば、一度外に出てまた戻ってくる学生もいると思います。
デザイン経営を通じて成長した人材が、地域の担い手になっていくことが、活性化にもつながっていくと感じています。
自治体への年次報告を通じて、学生と一緒にしっかりやり遂げたと伝えられることも、私たちにとって大切な区切りになっています。
5年間活動を続けてこられたこと自体が、積み重ねてきた信頼の証だと感じています。
うまくいっていなければ、1年で終わっていたはずですから。
■「口酸っぱく言い続ける」——組織にデザイン思考を定着させるということ

――社内にはどのようにこの考え方を浸透させてきたのですか?
中西氏
MIRAI KOMINKAは、母体であるオカムラホームがデザイン経営を実践してきた土壌の上に成り立っている組織です。
具体的な取り組みとしては、社員全体がデザイン経営やデザイン思考を理解して動けるようにという方針のもと、定期的なインプットの機会が設けられています。
代表の金子からも、部署や個人に至るまでこの考え方を体現していこうという発信が続いています。
その流れの延長線上で、MIRAI KOMINKAに関わる私たちにも自然とデザイン思考が浸透してきました。
正直なところ、どこまで定着しているかは自分でもわかりません。
ただ、こうして改めて振り返ると「あ、できているのかもしれない」と感じる場面があります。
口酸っぱく言われ続けているうちに、いつの間にか染みついていく。漬物のようなものかもしれません。
私自身、6年ほど前に話を初めて聞いたときは「デザインとは形をつくるものではなく、プロセスや、ものごとを成し遂げるための考え方だ」と教わって、なるほどと感じたのを覚えています。
それ以来、社員の間でも「デザイン」という言葉に対する見た目だけではない理解が共有されていると思います。
■技術ではなく、考え方——AI時代にこそ問われるデザイン経営

――これからデザイン経営に取り組もうと考えている方へ、メッセージをお願いします。
中西氏
新しい技術は、あくまで手段であって、考え方そのものではないと感じています。
AIのような新しい技術をどう使っていくか、組織としてどう向き合うかを考えるうえで、デザイン思考やデザイン経営という軸を持っておくことは、良い機会になるはずです。
性格や根本的な考え方は、一人ひとりなかなか変えづらいものですし、新しいことに挑戦するのはハードルが高いことも理解しています。
それでも、学生たちがそうしてきたように、まずは行動してみる。話を聞いてみる。そこから始めるのが一番だと思います。
MIRAI KOMINKAは5年という節目を終え、6年目を迎えました。次の10年に向けて、今も一歩ずつ動き始めているところです。
一般社団法人MIRAI KOMINKA for School 理事・中西祐二氏
株式会社オカムラホームのSDGs宣言をきっかけに、2020年7月設立。産学官連携により地域のSDGs課題解決に取り組む一般社団法人。設立時期よりBDAと協働し、デザイン思考を軸とした高校生向け育成プログラムを展開している。
一般社団法人ブランディングデザイン協会(BDA)では、デザイン経営・デザイン思考に関心をお持ちの企業・経営者の方に向けた会員制度をご用意しています。
詳細はこちらからご確認ください。