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第2回:インタビュー
​HeaR株式会社 採用コンサルタント 田島彩名様
「デザイン思考」を学んだコンサルタントの初めての「共創」
(後編)

こんにちは、Branding Design Association(以下bda)マネージャー・広報担当の長尾貴代です。

前回に引き続き、bdaのデザイナーとともに会社HPを作ってくださったHeaR株式会社の田島彩名さんにお話を伺いました。

インタビュー後編では、田島さんとbdaで実際に「共創」したパーパスサイトについて詳しくお伺いしています。学んだ

デザイン思考はどのように役に立ったのでしょうか?

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インタビュイー紹介 HeaR株式会社 田島 彩名様

2020年1月にHeaR株式会社に人事として入社。

その後採用コンサルタントとして20社以上の採用支援を行う。

デザイナーとしての経験やクリエイティブ職の経験はなく、

コンサルタントとしてクライアントのクリエイティブ制作の

ディレクションを行う上で「ブランディングコーディネーター」として

学ぶ必要性を感じはじめた。

HeaR株式会社Webサイト   https://www.hear.co.jp/

HeaR株式会社パーパスサイト https://www.hear.co.jp/purpose

━━実際に当協会ではHeaR様のパーパスサイトを制作させていただいたのですが、なぜパーパスサイトを作ろうと思われたの

ですか?

 

今後の経営戦略として「ヒトモノカネ情報」に加えて「意義」みたいなものが大事になってくると思ったことがきっかけです。

 

━━「意義」を経営資源だと捉えていらっしゃるのですね?

 

そうです。世の中が変わりつつあります。例えばナイキなど世界の名だたる企業が「意義」を大切にしはじめているのは、皆さんご存知だと思います。その中で私たちもちゃんと社会に対するスタンスを示すということを今後の経営戦略の中心に据える、大切にすべきだよねという気づきがHeaRの中であったのです。去年2021年の夏から秋にかけてですね。

 

しかし、ただ単にパーパスを発表しただけですとか、私たちの中で決めただけでは経営戦略において意味はないなと思いました。そうではなく、HeaRの社会に対するスタンスを広報としてちゃんと示していく必要があると思いました。そのうえで当社のサイト改修のタイミングに合せてパーパスについてのサイトを作りたいと思いご相談いたしました。

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━━実際、弊社のデザイナーと田島さんとでやりとりをしてパーパスサイトをつくりあげていただいたと思うのですが、その時のご苦労や良かったことを教えてください。

サイトを作るうえで大切なのは「私たちHeaRのパーパスである」ということです。私が作りたいものでも、社長が作りたいものでもなく、HeaRメンバー全員が納得感とワクワク感を持てるようなデザインにしないと誇れるようなページにならないと思っていたので、私たちがパーパスを意識していくためのワークショップを全5回実施しました。パーパスとはどういうものか、一人一人にとってのパーパスはなにか、デザインをどうしていきたいかという内容です。

━━ちょっと逸れるかもしれませんが、そのパーパスは個人のパーパスですか、それともHeaRの社員としてのパーパスですか?

 

少し難しいのですが、HeaRのパーパスを自分なりに解釈してできることは何だろうというワークショップを実施しました。

私たちのパーパスは「『青春の大人』を増やす」なのですが、採用支援会社だからといって働くことに限定する必要はないと

思っています。大人が青春を感じられる社会を作ることができれば、そのことが素晴らしいことだと思っています。

例えばそれが、大切な人と一緒に過ごす時間だったり、子育てに勤しむ時間だったり、仕事後の1杯だったり、仕事そのもの

だったり、あらゆる人が人生に誇りを持つ瞬間を見出せることが私たちの最終的なゴールです。

その中で、多くを占める働く時間をまず幸せにしたいよね。ということで私たちは採用支援事業をしています。

採用支援事業が世の中から必要なくなったら多分私たちは子育て支援などほかのかたちで、青春できていない大人のもとに行き

お手伝いをします。ですので、自分にとって人生を青春すること、誰かの青春を応援することを考えて言語化するワークショップ

から始めました。

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━━ありがとうございます。

HeaR様のパーパスサイトを拝見していると社員の皆様がそれぞれユニークな視点でパーパスを表現されていて、

HeaR様の事業と必ずしも一致していないのかもしれないなと思ったのでお聞きしました。

 

事業と社員一人一人のパーパスが一致にする必要はないのです。

私たちが目指している「『青春の大人』を増やす」という大きな枠の中の一部が採用支援事業でしかないからです。

採用支援事業から始めようということではありますが、仕事に青春を見いだせない人がいてもいいのです。

趣味の時間こそ青春、という人がいてもいい。

その人たちを否定すべきではないので、私たちは「『青春の大人』を増やす」を大きくパーパスとして掲げています。

そして、社員にもそれぞれの青春があります。働くこと、誰かを青春させること、子供の成長を見守ること、なんでもいいのです。

ですので、青春の大人を増やすために私ができることという広い意味でのパーパスをそれぞれ考えました。

 

━━社員の皆様が色々なアイデアを出していらっしゃるというバリエーションこそがパーパス、意義ということでもあるわけですね。それでは、パーパスサイトを作っていく中でのご苦労や注意されたこと、大事にされたことはございますか?

 

パーパスサイトを作るうえで私がすごく大事にしたのは、そのパーパスを見たことによって傷つく人がいないようにしたい

ということをすごく考えました。アグレッシブなメッセージとだと受け取られないように、一つ一つのコメントや伝え方、

デザインにはものすごく気を配っていく必要があるなと思い、細心の注意を払いました。

 

同じ会社の中にいる思考が近い人ですら納得させられない、満足させられないものであれば、世の中の色々な人に

「素敵だね」と言ってもらうのは難しいなと思っていたので、デザインアイデアの創出、デザインについての合意を得る

というところもかなり気を遣いワークショップを実施しました。

 

すごく難しいなと思いつつも、色々な人の意見を聞いていく過程、絞っていく過程において、デザイン思考のことを学んでいて

すごく良かったなと思っています。色々な人がそれぞれ意見を持っているのは当然ですが、それらをみんなが出し合う中で

すごくいいものが出てくるタイミングが絶対にあるのですよね。それがすごく良かったなと思っています。

ワークショップの準備は時間がかかりながらも、デザイナーさんに伝える前段でみんながどうしたら楽しくサイト制作に

関われるかということに気を付けながら、ワークショップを作っていきました。

 

━━田島さんはワークショップでアウトプットされていきた色々なアイデアをデザイナーさんに伝えられましたよね?

そこは大変でしたか?

 

意外とスムーズでした。

これまでの背景や意図。誰に伝えたいのか、何をしたいかということを絞っていたのですごくスムーズでした。

デザイナーさんにお伝えする段階でアイデアがまとまり切らなかったので、いくつかパターンを作っていただくということも

お願いしました。3パターン出していただき、私たちの中でもう1度どれがいいかという話し合いを行いました。

ですので、正直なところそんなに苦労はしませんでした。前段の準備は大事ですね。

 

━━そこにかかっていると言ってもいいですね。そうでないと候補が3つあっても決められなかったかもしれないですね。

 

非デザイナーの視点からすると、「どれもなんかかっこいい」んですよね。そこに特に根拠はないんですが……(笑)

 

━━なんとなくいいし、なんとなくピンとこないというふうになりがちですよね。それを防ぐための「デザイン思考」というわけ

ですね。実際にパーパスサイトをリリースされたのはいつでしょうか?

 

2022年に入ってからです。

 

━━その後のHeaR様の変化、反響はいかがでしょうか?

 

パーパスサイトを公開するにあたり、外部の方をお招きしてたくさんインタビュー記事を書かせていただきました。多くの方にご覧

いただき、インタビューやアンケートを通してHeaRのことを応援してくれる方やHeaRが好きと言ってくださる方が増えた実感が

あります。

 

青春という言葉は青臭くて、私も入社するまでは「そんなこと言っているやつって……」と思っていたのが正直なところです。

これは会社でも言っているのですが、私はあんまり高校時代や大学時代も部活や文化祭を楽しむ、いわゆる「青春してる」タイプ

ではなかったんですよ。そんな私がパーパスサイトを走り切ったことに意味があると思っています。

 

自分たちの想いを押しつけがましくなくちゃんと伝える機会はなかなかありません。ですので、私たち社員がいいなと思えるサイト

を作ることができたことで私たち自身も自分たちのパーパスを誇れるようになったと思いますし、社外の方にご覧いただいた時も

「なんか素敵だな」と思ってもらえるきっかけになったとすごく実感してます。

 

━━実際にサイトを作った効果を測るのは難しいですよね。

 

効果測定は正直なところ、とても難しいので、数値で出すことはできないのですが、私たちがプロダクトを創る時に、ただ面白い

プロダクトというだけではなく社会的意義があるということの訴えやすさに大きな変化がありました。

取材をしていただく時の切り口も増えたと思います。先日、ジョブテストというSaaSのサービスをリリースしたのですが、

スキルテストという日本ではまだ浸透していないサービスを「学歴や地域格差という就職の難しさを是正するサービス」として紹介

していただいたことがありました。私たちがパーパスを表現したことにより切り口が増えたというふうに実感しています。

 

━━パーパスを表現していたことにより、ジョブテストというストーリーが作りやすい、アピールがしやすいということですね。

そうです。私も大学を中退しており、学歴コンプレックスが強いのです。

今の社長が拾ってくれていなかったら私は今頃何していたのか、フリーターをしていたかもしれないと時々思うことがあります。

そんな私にとってもジョブテストはすごく思い入れの強いものなのです。

学歴や地域によらず、自分のスキルだけを正当に評価してもらえる。

それはプロダクトとしていいものなのですが、HeaRの「『青春の大人』を増やす」というパーパスが結びつくことにより、

伝わりやすい、わかりやすいサービスになっていると思います。

 

━━印象に残る、記憶に残るところにもパーパスが貢献するということですね。

 

そうなのです。プレスリリースの最後のページでパーパスのサイトを紹介するなど、HeaRのパーパスをいつでも誰でも閲覧できる

状態にしておくことが大事でした。

 

━━これからデザイン思考検定やデザイン思考講座を学ぶ人に向けてのオススメポイントを教えてください。

 

デザイナーさんとコミュニケーションを取る・取らないに関わらず、何かを伝える仕事の人にはぜひ皆様に受けていただきたいな

と思っています。頭の中でなんとなくモヤモヤ想像していることを口に出す、伝えるというプロセスを学ぶことがデザイン思考だ

と思っていますので、自分はデザインに興味がないという人でも、是非1回学んでみると仕事がスムーズになるかと思います。

 

思考のプロセス、方法、フレームワークは自分の体に合っているものをいくつか知っていれば絶対どこかで役に立ちます。

特にデザイナーさんがやっている思考プロセスを非デザイナーは学ぶ機会がなかなかないので、それを学ぶことによって見えてくる

もの、進めやすくなるものは、デザインを作る・作らないに関わらず、たくさんあると実感しました。

何かを伝える仕事の人、コミュニケーションをとりながら何かを作り上げていく人は是非受けると仕事がスムーズになって良い

と思います。

 

━━ありがとうございました。

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 「デザイン思考」を学んだコンサルタントの初めての「共創」(前編)

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